おれの人生なんて、こんなもんなだそうそう

September 23, 2006

モモの世界

「君は、正義と、悪と、どっちでいたいんだい?」

薄暗い路地裏で、さっきまで歩いていた都会の喧騒がかすかに残る中、
さりげなく、でもこれがとても重大なことのように彼が言った。
まるで、僕がどう答えるのかは分かってる、と言わんばかりに薄笑いを浮かべているし、
むしろ、僕がどう答えるべきかを諭すような目で僕を見ている。

どうすればいいか、このまま流れに乗ってしまえばいいのか。
僕が答えに窮して道の隅にあるゴミ箱に視線を移していると、彼はもう一言つけくわえてきた。

「君は、アムロと、シャアと、どちらでいたいんだい?」



勘違いしている。

「ついてきてくれ。」
彼が、また、ついてくるんだろ?と言わんばかりに僕に話しかけてくる。
答えを待たずに歩き始める彼に、やっぱり僕はついて行ってしまう。
都会の人ごみの中を彼は誰にもぶつからずに真っ直ぐに歩き、
僕は何人かにぶつかりそうになりながら右へ左へと避けながら早足で歩く。
「まっすぐに歩いていれば、問題なんてないんだよ。」彼がつぶやくように言い、
ぶつかりそうなときは避けなきゃいけないんです、と僕は心の中でつぶやいていた。

彼が立ち止まったのは、携帯電話ショップの前だった。
赤や、オレンジや、黒や、白の携帯電話が並んでいる、例の、ありふれた携帯電話ショップだ。
「ここにしようか。」と言って、彼は店の中に入っていった。
最近の携帯電話ショップには、一休みコーナーでもあるのだろうかと、そんなわけはないだろうと、
自分の中で一通りのやりとりをしながら、僕も店内に足を踏み入れた。

彼は、接客カウンターの前の椅子に座り、美人で若い女性と話をしていた。
僕がその後ろに立ち、しばらくその様子を眺めていると、
彼はカタログの中の携帯電話のうちのひとつを選び、
サービスプランを選び、免許証らしきものを彼女に渡し、
サインをし、そして、ハンコをついた。
彼女は、ハンコがつかれた書類を手に取り、「お待ち下さい」と言って奥に行き、
しばらくすると両手におさまるくらいの箱を持ってやってきて、
その箱の中から携帯電話を取り出し、僕の前にいる彼に手渡した。
「ありがとう」と言って彼は席を立つ。
そのまま、彼について行こうかとした矢先、
例の美人で若い携帯電話ショップの店員が、「次のお客様。」と声をかけてくれた。
そうか、やっぱり連れ合いには見えないか、と考えながら、僕は彼女に愛想笑いをしてその場を離れた。

店を出てからしばらく歩いた後、雑居ビルの谷間にある公園のベンチに僕らは腰掛けていた。
彼は、さっき手に入れた携帯電話を僕に差し出した。
「世界征服の第一歩だ。」と言う彼の姿に、僕はなんとなく違和感を覚えた。
彼は二枚目で、独特の雰囲気の、いわゆるカリスマ性のある外見をしているが、
物腰は柔らかそうで、第一、どう見ても日本人だ。
世界征服、という言葉はどちらかと言うと、
スキンヘッドの、悪そうな顔をした外国人が発すべき言葉のような気がした。
いや、そんなことより、世界征服ってなんだ?と僕が怪訝な表情をしていると、
「思い出を、消しちゃうんだ。」と、彼が僕に言う。そうか、思い出を消すのか、と納得してしまう。
そんな僕の表情を読み取って、彼がもう一度さっきの単語を口にする。
「世界征服、するんだよ。君は、これから、この携帯電話を非通知設定にしてかたっぱしから電話をしまくるんだ。そして、相手が出る前に切る。それが、第一歩なんだ。」

at 11:13│Comments(2) めざせ、小説王! 

この記事へのコメント

1. Posted by fumifumi   September 25, 2006 23:25
うーん><。。。
ちょっとモモの世界とは違う気がする。
ファンタジーとバーチャルが混ざってる。
これからどうなるの?
っていう思いと、これがオチ?っていう思いが交錯します。
2. Posted by りょ⇒   October 01, 2006 21:51
えっとね、お話としてはもうちょい先まで考えててんけど、
さすがに長いかと思い、途中で切りました。疲れたし。

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